弁護士コラム
第31回
『業務委託契約の退職代行』について
公開日:2024年10月10日
退職
弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。
退職代行をはじめて早いもので、数年が経ちました。その間、数多くの退職代行をした経験から、「これは」と思うことをコラムにします。
コラム第31回は、『業務委託契約の退職代行』についてコラムにします。
フリーランス新法が令和6年11月から施行されます。そこで、業務委託契約を結んでいる方で、退職代行を検討する方にとって興味のある内容だと思います。10分程度で読める内容となっています。お付き合い頂けると幸いでございます。
目次
1.フリーランス新法が令和6年11月からスタートします
令和6年11月からフリーランス新法が施行されます。そこで、令和6年11月以降については、業務委託については契約書(参考:「フリーランス新法」義務事項①書面等による取引条件の明示)を締結することが義務付けられているので、契約書がない退職代行のケースは少なくなることが予想されます。
2.業務委託契約が雇用契約である旨の主張について
契約書を結んでいる場合には、退職(解除)の場合には、概ね2ヶ月(60日)前に解除(退職)の申し出が必要な規定が入ります。2ヶ月前の申告が契約書に入っている際には、即日退職の主張することで、債務不履行に基づく損害賠償請求をされるケースが令和6年11月以降、増えることが予想されます。そこで、即日退職を主張するには、実質雇用である旨の主張(偽装委託の主張)が必要になります。
3.労働者性について
契約が雇用にあたるか、業務委託にあたるかの判断は、昭和60年12月労働基準法研究報告に基づく基準によります。労働者性があれば、雇用と判断されます。また、労働者性については、使用される=指揮管理下の労働にあたるか否かで判断されます。なお、判断は一つの項目によって判断されるものではなく、総合的な判断がされます。
①仕事の依頼、業務従事の指示等に関する諾否の自由の有無
仕事の依頼、業務指示等に対して拒否する自由がない⇒労働者性が高い
②業務内容及び遂行方法に対し指揮命令の有無
業務に対して事細かに指示命令がある⇒労働者性が高い
③拘束性の有無
勤務場所・時間が指定されて管理されている⇒労働者性が高い
④代替性の有無
代替性がない⇒労働者性が高い
⑤報酬に関する労務対償性
歩合性ではなく、一日あたりの金額で報酬が定められている⇒労働者性が高い
⑥機械器具の負担関係
業務に必要な高価な機械器具を委託元の会社側が提供する⇒労働者性が高い
⑦専属性の程度
他所の業務に従事することが制約・事実上困難⇒労働者性が高い
⑧報酬の額
同事業所の勤務する労働者と比較し、同等の報酬⇒労働者性が高い
同事業所の勤務する労働者と比較し、著しく高価な報酬⇒労働者性が低い
4.即日退職について
上記の①から⑧を総合考慮して、偽装委託の主張をします。その際、偽装委託の主張にあたっては、雇用契約にあたるので、業務委託契約の無効を主張します。さらに、民法627条1項によれば、退職の申し出は、14日経過後に退職となることが定められているので、14日後が退職日になる主張をします。なお、偽装委託を主張した場合には、60日前申告は、民法627条1項に反し、無効となりますし、弁護士から退職通知した日から欠勤の連絡をしますので、退職通知した段階から出勤不要にさせます。
5.まとめ
業務委託契約を結んでしまったものの、即日退職を希望される方は、私までご相談ください。
(参考条文)
民法627条1項
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。
参考法律
フリーランス新法とは、正確には、「フリーランス・事業者間取引適正化等法」を指します。
・フリーランスとは、業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しないものを言います。
・発注事業者とは、フリーランスに業務委託する事業者で、従業員を使用するもの言います。
週労働20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる者が従業員にあたります。
義務事項
①書面等による取引条件の明示
②報酬支払期日の設定・期限内の支払
③禁止行為
④募集情報の的確表示
⑤育児介護等と業務の両立に対する配慮
⑥ハラスメント対策に係る体制整備
⑦中途解除等の事前予告・理由開示
弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介
いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。
この記事の執筆者
弁護士清水 隆久
弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士
埼玉県川越市出身
城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。