弁護士コラム

第27回

『資格取得費用(研修費用)の返還と退職代行』について

公開日:2024年10月15日

退職

弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。
退職代行をはじめて早いもので、数年が経ちました。その間、数多くの退職代行をした経験から、「これは」と思うことをコラムにします。

コラム第27回は、『資格取得費用(研修費用)の返還と退職代行』について書きたいと思います。
退職時に会社から資格取得費用(研修費用)の返還をされた場合にはご相談ください。
10分程度で読める内容となっております。最後までご拝読頂けると幸いでございます。

目次

1.資格取得費用(研修費用)についてのパターン①②

資格取得費用を会社負担とするにあたっては、2パターンがあります。2パターンのうち、今回は、①会社が費用負担した上で、退職時に、退職者について費用の請求をするケースについて解説します。②会社が費用負担した際に、退職者とその費用について、金銭消費貸借契約書を交わしているケースは、コラム第28回で解説します。

それでは、今回は、①について解説しますが、分かりにくい話のため、最初に端的に言うと、①については、労働基準法第16条の賠償予定の禁止にあたり、無効になりますので、返還する必要はありません。

2.誓約書にサインしたケース

具体的事案として、退職にあたって、例えば、入社から3年以内に退職した場合に、研修費用や資格取得費用の全額を支払うよう誓約書にサインするケースがあります。会社は、従業員を使って会社利益をあげるために、従業員に研修や資格取得をさせ、業務を行う必要があるのであって、本来なら会社の経費で負担すべきです。 また、3年以内に、退職することを制約している点で退職の自由を害しています。

このように、全額を支払うことを強制することは、労働基準法第16条の賠償予定の禁止にあたり無効となります。 したがって、資格取得費用や研修費用を返還する必要がありません。

(賠償予定の禁止)

労働基準法第16条
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

このような場合に、弁護士の退職代行を利用しつつ、資格取得費用や研修費用の返還拒否を受任通知書に記載して、拒否してもらうのが有効な方法です。お困りの際に、私までご相談ください。力になります。

3.賃金全額払いの原則について

とある会社が3年以内の退職の際に、誓約書ではなく返還させる「同意書」を書かせているので、有効である旨の反論をしてきましたが、「事前に」資格取得費用や研修費用の返還を約束させることは、繰り返しになりますが、形式に関わらず、労働基準法第16条の賠償予定の禁止に反し、法律上許されません。

さらに、事前に最終給与から、その費用を控除する書面や誓約書を書かせていても、控除することは、賃金全額払いの原則に反して、無効となります。

労働基準法第24条

賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。

4.まとめ

退職時にあたって返還請求された場合には、弁護士の退職代行を検討してください。その際、事前に会社と交わした誓約書や同意書を準備して頂けると話がスムーズですが、手元にない場合でも、遠慮なく私までご相談ください。

弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介

いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。

この記事の執筆者

弁護士清水 隆久

弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士

埼玉県川越市出身

城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。