弁護士コラム
第35回
『即日退職と退職代行』について
公開日:2024年10月29日
退職
弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。
退職代行をはじめて早いもので、数年が経ちました。その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。
コラム第35回は『即日退職と退職代行』について書きたいと思います。「即日退職」の場合には「即日で辞められる」ので、今回は即日退職について解説します。
また、依頼したその日に対応して退職することも「即日退職」にあたりますので、依頼したその日に退職代行する「即日退職代行」についても合わせて簡単に説明します。5分程度で読めますので、お付き合いください。
では、内容に入ります。
目次
1.即日退職について
即日退職とは、退職代行したその日が退職日になる、つまり「即日で辞められること」を言います。民法第627条第1項によれば、退職の申し出をしてから14日経過後が退職日になります。民法第627条第1項によれば、退職の申し出をした日から14時日経過後には、特段の事情がなければ「必ず」退職になりますが、14日より短い「即日退職(即日で辞められること)」とするためには、退職者と会社との双方の「合意」が必要になります。
次に、退職代行のメリットの一つとして、退職通知した段階から「一度も出勤しない」ことが挙げられます。仮に、退職通知した日から14日間を全て出勤しない場合には、会社にとっても特段メリットがないので、会社としても退職通知をした日を退職日とする「即日退職(即日で辞められること)」について「合意」をするのが一般的です。
ここまでをまとめますと「即日退職(即日で辞められること)」は、会社の「合意」が必要となりますが、会社が「合意」することがほとんどです。しかしながら、この「合意」は後から撤回するケースもあるので「合意」したことについて、相手方の会社に「十分」確認する必要があります。
また「合意」するか否かについて交渉することができるのは、弁護士が行う退職代行のみとなりますので「合意」について「交渉」が必要なケースは、弁護士の退職代行を選択してください。
仮に、退職代行会社の説明で「弁護士監修」となっていても「監修弁護士」が「即日退職」について交渉することはないので、退職代行会社に依頼した場合には「即日退職」できないケースも多発しているので、注意が必要です。
2.メリット、デメリット
次に引継義務との関係では原則として、引継義務は退職日までの義務となりますので、即日退職(即日で辞められること)をすることで早期に引継義務から解放されることから、損害賠償の可能性が低くなります。「即日退職(即日で辞められること)」はメリットがあります。
また「即日退職(即日で辞めること)」することでいち早く退職することができますので、最短で次の転職先に就職することができるメリットがあります。
その一方で、仮に社宅がある場合には社宅は退職日までに退去しないとならないため「即日退職(即日で辞められること)」の際には、退去日が短くなることがあります。「即日退職(即日で辞めること)」は社宅がある方とってデメリットになります。また、有給休暇や代休休暇を消化したい方は「即日退職(即日で辞めること)」をすることで、有給休暇や代休休暇を消化できなくなるデメリットもあります。
ここで、簡単にまとめますと、即日退職(即日で辞められること)のメリットとしては、
①損害賠償の可能性が低くなる。
②転職先でいち早く働きはじめられる。
その一方で、デメリットとしては、
③社宅がある場合にすぐに退去する必要がある。
④有給休暇、代休休暇消化ができなくなる。
3.実質即日退職について
次に「実質即日退職」について説明します。「実質即日退職」とは、退職代行したその日を退職日にするのではなく「一度も出勤しない」で退職をすることを言います。即日で辞められる訳ではなく「実質的」に即日で辞めることを言います。
民法第627条第1項によれば、14日経過後には退職が必ずできますので、特段の事情がなければ「必ず」実質即日退職になります。「一度も出勤しない方法」としては、欠勤にする方法、有給休暇、代休休暇を取得する方法があります。会社が「即日退職(即日で辞めること)」に「合意」しない場合であっても、民法第627条第1項の14日間を満たす方法として「実質即日退職」という方法が考えられます。実質即日退職のメリット、デメリットとは、先程の即日退職のメリット、デメリットとが逆になります。
メリットとしては、
⑤退職日が延びるので、社宅の退去日が延びる。
⑥有給、代休が消化できる。
デメリットとしては、
⑦引継義務が延びるため、損害賠償の可能性が即日退職と比べて増える。
⑧退職日が延びるため、転職先に就職する時期が遅くなります。
なお、上記の話は、正社員、アルバイト、パートなどの期間の定めのない雇用契約の場合であって、契約社員である期間の定めのある雇用契約については「やむを得ない事由」がある限り、退職を申し出た日、または退職者が指定した日が退職日になるため、常に「即日退職(即日で辞めること)」になります(民法第628条第1項)。
4.即日対応の即日退職代行について
依頼したその日に退職代行するケースは全体の2割程度です。5件に1件は、依頼されたその日に退職代行しています。私の方では、できる限り柔軟に対応していますので、希望がありましたら、依頼された日に退職代行するようにしています。即日対応の場合でも緊急対応で、追加費用は頂いていませんので、いつでも相談ください。
5.まとめ
退職代行にあたって「即日退職」をご希望の場合には、事前に私までご相談ください。
最大限、即日退職になるように交渉し、即日退職にならない場合でも、「実質即日退職」になるように退職代行します。
参考条文
民法第627条第1項
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
民法第628条第1項
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる
弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介
いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。
この記事の執筆者
弁護士清水 隆久
弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士
埼玉県川越市出身
城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。