弁護士コラム
第36回
『30日前、60日前、2ヶ月前、3ヶ月前、6ヶ月前申告と退職代行』について
公開日:2024年10月31日
退職
弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。
退職代行をはじめて早いもので、数年が経ちました。その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。
コラム第36回は『30日前、60日前、2ヶ月前、3ヶ月前、6ヶ月前申告と退職代行』についてコラムにします。
目次
1.民法第627条第1項について
就業規則や雇用契約書で退職する際には、30日前、60日前、2ヶ月前、3ヶ月前、6ヶ月前等に退職の申し出をする旨の記載がありますが民法第627条1項は「2週間前に申し出をする」となっているので、どちらの規定が優先されるか否かがよく問題となります。こちらの問題については、よくご質問を受けます。
参考条文
民法第627条1項
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者はいつでも解約の申入れをすることができる。
この場合において、雇用は、解約の申入れの日から「2週間」を経過することによって終了する。
2.結論
結論としては、仮に、就業規則や雇用契約書等で30日前、60日前、2ヶ月前、3ヶ月前、6ヶ月前の申し出が必要とされていたとしても、民法第627条第1項に反し、無効になります。その上で、30日前、60日前、2ヶ月前、3ヶ月前、6ヶ月前の規定は、14日前に読み替えて雇用関係に適用されます。
退職日の数え方は、初日不算入となるので、例えば、10月1日に退職の申し出をした場合には、10月15日が退職日になります。退職日、公休などは14日に含まれます。
民法第140条
日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は参入しない。
ただし、その期間が午前零時から始まるときはこの限りでない。
3.高野メリヤス事件について
高野メリヤス事件(東京地裁昭和51年10月29日)では、労働者が労働契約から脱することを欲する場合にこれを制限する手段となりうるものを極力排斥して①「労働者の解約の自由」を保障しようとしているものとみられ、このような観点からみるときは、②民法第627条の予告期間は「使用者のためにはこれを延長できないものと解する」のが相当であると認定されています。
この裁判例のポイントとしては、退職者には「退職の自由」があること「14日を超えた期間は、労働者のためにあって、会社のための期間ではない」ので「14日より長い申告」は、民法第627条第1項に反して「無効」になります。
次に、この裁判例によれば「退職の自由」の保障しているので、民法第627条第1項に反した場合に、戒告や減給の制裁などの懲戒処分はできないと考えます。
4.期間の定めのある雇用関係について
以上の結論については、期間の定めのない雇用契約、すなわち、正社員や試用期間のある正社員、パート、アルバイトの話であって、期間の定めのある雇用契約、すなわち、契約社員には、民法第627条第1項の適用がありません。契約期間の定めのある雇用契約には、民法第628条が適用され、退職するには「やむを得ない理由」が必要となります。「やむを得ない理由」の場合には、退職の申し出をした日が退職日になりますので、契約期間の定めのある雇用契約の退職は即日退職になります。
参考条文
民法第628条
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても「やむを得ない事由」があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。
「やむを得ない事由」については、法律上の定義はありませんが、病気・妊娠・出産・育児・介護・パワハラ・賃金未払いなどは「やむを得ない事由」に当てはまると考えられています。
5.まとめ
会社内規定で、退職にあたって30日前、60日前、2ヶ月前、3ヶ月前、6ヶ月前等に退職の申し出が必要な場合には、弁護士の退職代行について検討ください。また、お困りの際には、遠慮なく私まで相談ください。
弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介
いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。
この記事の執筆者
弁護士清水 隆久
弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士
埼玉県川越市出身
城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。