弁護士コラム

第57回

『弁護士による自衛隊員(自衛官)の病気休暇期間中及び休職期間中の退職代行』について

公開日:2024年12月20日

退職

弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。

退職代行をはじめて早いもので、数年が経ちました。その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。

コラム第57回は『弁護士による自衛隊員(自衛官)の病気休暇期間中及び休職期間中の退職代行』について書きたいと思います。

目次

1.病気休暇期間中、休職期間中の退職代行について

最近では、自衛官(自衛隊員)の方で病気休暇期間中、または、休職期間中の退職代行を依頼するケースが増えています。その際、2度と職場、営内、基地内の自衛隊関係施設には戻りたくないので、戻らないで退職ができますか?と言うご質問が多いです。

前日、依頼者から詳しく話を聞いたところ、退職代行を依頼したけど、整備返納はご自身で行う必要はあるし、退職願や退職調書の作成は退職者本人がする必要があるので、一度、所属部隊に戻るように言われてしまい退職の手続きが進まず困っている旨のご相談内容でした。

自衛官(自衛隊員)の退職代行は、弁護士の方でも扱ったこともない方も多いですし、自衛隊は、独自のマイルールが多いのも特徴です。私も過去、色々な退職のパターンを一通り経験するまで、自衛官(自衛隊員)の退職代行は、とにかく胃が痛くなることも多くありました。

自衛官(自衛隊員)の退職では、①退職願(退職調書)の提出、②厚生関係書類の提出、が必要となります。その際、①②とも、記入のミスがあったりで、時間や部隊側の手間がかかるため、所属部隊に戻ってくるように強く指導が入ります。もちろん、体調が良く部隊に戻って記入できる自衛官(自衛隊員)の方は、所属部隊に戻ることもできるかもしれません。しかしながら、体調不良があった際には、所属部隊に戻ることができないケースも多くあります。

結論としては、①②について、全て郵送でやりとりできれば問題ないはずなので、私が自衛官(自衛隊員)の退職代行を行う際には、①②とも、郵送で行います。病気休暇期間中、休職期間中の自衛官(自衛隊員)の方で退職にお困りの方は、退職手続きは郵送で行いますので、遠慮なく私までご相談ください。

2.整備返納について

次に、整備返納について簡単に解説します。

確かに、整備返納については規則上、退職時に整備返納する義務が自衛隊員には課せられています。しかしながら、体調が悪い場合には例外的に、その義務が免除されると考えています。実際に整備返納をしない場合でも、過去一度も懲戒処分されたことはありません。

行政法的に考えても、規則上、退職時に整備返納しなければならないため、整備返納しない義務を履行しなかったことは、退職時に「確定」するため、退職時には懲戒処分の対象となる自衛官の身分がないため、そもそも懲戒処分待ちになることはありません。

3.まとめ

自衛官の退職代行は弁護士しかできないはずなのに、一部の労働組合系の退職代行業者が「自衛官の退職代行」の依頼ができる旨宣伝しています。

実際に、私の方にも某退職代行業者が自衛官(自衛隊員)の退職代行をして、困りに困って私まで相談されるケースがあります。まず、自衛官(自衛隊員)が組合加入されるのは、自衛隊法第64条に明確に反します。

・参考条文

自衛隊法第64条

隊員は、勤務条件等に関し使用者たる国の利益を代表する者と交渉するための組合その他の団体を結成し、又はこれに加入してはならない。

さすがに、知らずに組合加入したので1発で懲戒処分の対象になることはありませんが、労働組合系の行う退職代行は、自衛官(自衛隊員)の退職代行にとっては、役に立たないですし「懲戒処分の対象になる危険な退職代行」です。

自衛官(自衛隊員)の方は、労働組合系の退職代行業者に依頼するのではなく、弁護士の退職代行にご依頼ください。迷った場合には、遠慮なく私までご相談ください。力になります。

・関連コラム

第51回『弁護士による自衛官(自衛隊員)のための病気休暇取得代行サービス及び休職代行サービス』について

第54回『弁護士による自衛官(自衛隊員)の病気休暇取得と退職代行』について

弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介

いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。

この記事の執筆者

弁護士清水 隆久

弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士

埼玉県川越市出身

城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。