弁護士コラム

第60回

『弁護士の退職代行と退職時の給付金が最大200万円?』について

公開日:2024年12月27日

退職

弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。

退職代行をはじめて早いもので、数年が経ちました。その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。

コラム第60回は『弁護士の退職代行と退職時の給付金が最大200万円?』について書きたいと思います。

目次

1.退職時の給付金が最大200万円!?

今回は退職代行時によくご質問を頂く「最大200万円の給付金が支給されるのはなぜか」という疑問にお答えいたします。そもそも詐欺ではないかというご質問をもらいますので、お答えしますと「詐欺ではありません」。

もっとも、そんな凄いものではなく、ただ国から支給される給付金が最大で200万円ですと言ってるに過ぎません。最大200万円というのは要件にあたれば「誰でも」支給されますし、確かに無理に支給されるようにしたら、それは不正受給になるので、受給時には不正受給にならないように十二分に気をつけてください。よくわからない業者の甘い言葉には騙されないようにしてください。

2.最大200万円支給されるパターン(傷病手当金を使うパターン)

では、最大200万円が支給されるネタについて話をすると、私のおすすめのパターンとしては、まず1年以上社会保険加入期間があれば、退職時に傷病手当金を申請する→6ヶ月後に手帳を取得→就職困難者による失業保険給付を受ける流れが、退職時に1番給付金を受けることができ、申請としてスムーズです。この流れが理解できれば、わざわざ高額な費用を払ってまで、最近盛んに騒がれている失業サポートを受ける必要がありません。

具体的に解説していきます。

まず、退職時の傷病手当金の支給申請と退職時の失業保険受給時にあたって「就職困難者」にあたる場合に、最大200万円以上支給されますし、無理せず「自然と」最大200万円から500万円程度は支給されます。まず、傷病手当金支給は健康保険上の制度で、社会保険に1年以上連続して加入している必要があります。社会保険加入期間が1年ある場合には、退職後についても引き続き「傷病手当金」が「1年6ヶ月」間支給されます。

支給額は毎月の給与の67%程度支給されます。総支給の30万円の約67%であれば、20万円程度、支給されます。20万が18ヶ月支給される場合には、合計360万円支給されます。

傷病手当金申請については、コラム第3回第4回で解説していますので、あわせてご確認ください。

・参考コラム

第3回 退職代行時の傷病手当金請求

第4回 休職代行

3.就職困難者について

次に、就職困難者とは雇用保険上の制度で、①身体障害者、②知的障害者、③精神障害者等により就職が著しく阻害されている方などが該当します。一般的には、③うつ病の方が多いと思いますので、うつ病の方について解説します。

まず、うつ病の場合には、医師が労務不能と認めた場合には、傷病手当金を18ヶ月の間支給を受けることができます。その際、失業保険は傷病手当金支給と併給されませんので、失業保険については延長手続きを取ります。

また、うつ病の方が「就職困難者」にはあたるためには、手帳または医師の意見書を取得するようにしてください。手帳は、簡単に言えば、6ヶ月以上の労務不能であり、日常生活に影響がある場合には手帳の取得手続きができます。手帳の取得手続きについては、お住まいの区役所や市町村の役所または役場にてお問い合わせください。窓口で相談して貰えれば詳しく教えて貰えます。

精神障害者保健福祉手帳とは、省略して障害者手帳、精神障害者手帳と呼ばれることもあります。特に、精神障害者保健福祉手帳には「障害者手帳」と書いてありますので、障害者手帳と呼んだときに精神障害者保健福祉手帳だけを指すことも多いです。この手帳を持っていることで、公共料金の割引、税金の控除、手当の支給など様々な福祉サービスを受けることができます。

また、手帳がない場合でも、医師の意見書があれば就職困難者にあたるので、詳しくはハローワークにお問い合わせください。医師の意見書の用紙についてはハローワークの窓口で事前にもらうようにしてください。各ハローワークでも様式が異なる場合もあります。なお、統合失調症や双極性障害等については、医師の意見書ではなく、診断書のみでも「就職困難者」に該当します。

就職困難者にあたる場合の失業保険の給付日数については
1年未満の退職は150日間
1年以上の加入期間がある場合は
45歳未満が300日
45歳以上65歳未満は360日
となります。

支給額の計算方法は「給付日数×失業手当日額」で決まり、前職の「退職前6ヶ月間の給与」の約50〜80%に相当します。
失業手当日額は年齢区分ごとに上限があります。賃金の低い方ほど高い率となっています。

(令和6年8月1日現在)
30歳未満 7,065円
30歳以上45歳未満 7,845円
45歳以上60歳未満 8,635円
60歳以上65歳未満 7,420円

仮に、45歳未満の方が300日支給されるとして300日につき1日あたり7,065円支給されるとしたら、合計2,119,500円が支給されます。補足として、就職困難者は離職票の退職区分としては、自己都合退職にあたります。また、2ヶ月の給付制限期間もなく待機期間の7日のみになります。就職困難者にあたれば、早急な失業保険給付になりますので、早急な支給が受けられるという雇用保険上のメリットがあります。

4.まとめ

以上から傷病手当金申請と就職困難者による支給を合わせると合計で5,719,500円になります。

繰り返しますが、私のおすすめのパターンとしては、まず1年以上社会保険加入期間があれば、退職時に傷病手当金を申請する→6ヶ月後に手帳を取得→就職困難者による失業保険給付を受ける流れが退職時に1番給付金を受けることができ、申請としてスムーズです。この流れが理解できれば、わざわざ高額な費用を払ってまで、失業サポートを受ける必要がありません。傷病手当金申請と就職困難者についてお悩みでしたら、私までご相談ください。

・参考コラム

第3回 退職代行時の傷病手当金請求

第4回 休職代行

弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介

いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。

この記事の執筆者

弁護士清水 隆久

弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士

埼玉県川越市出身

城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。