弁護士コラム

第61回

『弁護士による退職代行はなぜダメだと言われる理由』について

公開日:2024年12月27日

退職

弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。

退職代行をはじめて早いもので、数年が経ちました。その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。

コラム第61回は『弁護士による退職代行はなぜダメだと言われる理由』について書きたいと思います。

5分程度で読める内容になっています。このコラムが2024年最後のコラムになるかもしれません。

2025年も引き続き弁護士法人川越みずほ法律会計を宜しくお願いします。

目次

1.退職代行サービスとは

退職代行とは、自分自身で退職手続きをしないで退職の代行または退職の代理を他の誰かに依頼して退職手続きするサービスです。

2.ダメな理由について

ダメと言われる理由は、①自分自身で退職手続きをしない点、②他の誰かに依頼する点、にあります。また、ダメと言うのは誰かと言えば、③退職する会社や④広い意味での社会一般や世の中、になります。まず働く側と働いてもらう側は、平等であることが必要です。面接をするのは会社で、採用をするのも会社でありますので、働く側よりも働いてもらう側(会社)の方が力関係で上になります。

そこで、自分の労働力を最大化にするためには、どこで働くか、どのように働くかなどについての選択を効率化する必要があります。そのような意味で、会社との力関係を埋めるためのエージェント業務として「退職代行サービス」があると考えます。実際、採用時には、エージェント業務を使うことは今ではあたり前になっています。今後はより退職時のエージェント業務としての「退職代行サービス」が増えることが予想されます。

よって、会社側としては、経営戦略的には退職の問題を無視することはより一層できなくなります。 したがって、①④については、ダメというのではなく、今後は、より世の中の常識になっていくことが予想されます。

次に、退職代行がダメだと言う会社(③)の傾向としては、働く側と働いてもらう側は平等であるという視点が欠けています。今後については、労働力人口がますます減っていき、人手不足がより問題となります。その際、生き残る会社であるためには「働く側と働いてもらう側は、平等である」ことを意識して、採用から退職までを考える必要があります。

パワハラをする会社、時間外を当たり前に行わせる会社、仕事が忙しすぎるのも、仕事がない会社もより働く側にとって魅力的な会社にするように努力すべきです。繰り返しになりますが、会社側も退職代行サービスに対して、より対策を立てる必要があります。

3.弁護士以外が行う退職代行サービスについて

なお、今回は補足的に、②他の誰かに依頼する点については「退職を伝える」ことだけであれば、弁護士以外が行っている退職代行会社だけでも法的には問題となりません。しかしながら、伝えるだけであれば、自分自身で退職届を送って終わりにするのと変わりはありませんので、弁護士以外が行っている退職代行会社に依頼する必要性がどこまであるか疑問です。

実際に、弁護士法違反(弁護士法72条違反)の問題が生じるため、弁護士以外が行っている退職代行会社は「本人が退職したいと言っているので、本人から退職届を送ります」しか会社側に伝えません。

しかしながら、実際には、退職にあたっては、退職の意思を伝えて終わりではなく交渉事項等があります。有給休暇取得(有給消化)や30日前の就業規則と民法627条第1項や期間の定めのある契約(民法628条第1項)や退職することで、損害賠償請求される可能性もあり、退職における諸問題は様々です。

例えば、退職通知したその日を退職日とする「即日退職」のケースでは、会社と退職日について会社の合意を取るために交渉が必要なケースです。即日退職の合意について会社と交渉した場合には、非弁となり、その退職代行自体が弁護士法第72条に違反し、無効となります。

そうであれば、退職代行は弁護士に依頼するのが一番です。

ちなみに、どの弁護士に依頼するかで、退職代行に差は生じないと考えますので、退職代行における弁護士のランキングはありません。詳しくは第44回の「退職代行における弁護士人気おすすめランキングについて」のコラムを読んでいただければ、より理解が進むと思います。

4.まとめ

今では、❶弁護士が行う退職代行サービス、❷労働組合が行う退職代行サービス、❸退職代行会社が行う退職代行サービスがあり、選ぶ側として、迷うのは当然です。

最近では、❷労働組合が行う退職代行サービス、❸退職代行会社が行う退職代行サービスと比べて、❶弁護士が行う退職代行サービスの料金自体も「安い」弁護士事務所もかなり増えました。例えば、『退職代行 弁護士』のキーワードで、ネット検索してもらえれば、❶❷と比較しても「安い」弁護士事務所が増えたことがすぐにわかります。

今後は、❶❷の退職代行業者(会社)と❸弁護士事務所との競争が激しくなることが予想されますが、利用する側にとっては「安い」価格で、より質の高いサービスが提供されると考えます。

そのような意味で、弁護士法人川越みずほ法律会計の退職代行が特別に「安い」訳ではありません。 今では、退職代行業者(会社)よりも「安い」弁護士事務所が増えことから、あえて❶❷の退職代行業者(会社)に依頼相談する必要はありません。

お悩みの際には、ネット上の検索サイト(google、yahooなど)で『退職代行 弁護士』と検索して調べるか、または、私まで遠慮なくご相談ください。

・関連コラム

第42回 『弁護士法人川越みずほ法律会計の退職代行』について

第43回 『「もう無理だ」と感じたら川越みずほの退職代行がおすすめ』について

第44回 『退職代行における弁護士人気おすすめランキング』について

第53回 『弁護士による退職代行の口コミ(クチコミ)ランキングサイト、まとめランキングサイト、ミシュラン・ガイド』について

を、読んでいただきましたら、現状の退職代行について理解が進むと思います。お時間ありましたら、ご拝読ください。

・参考条文

民法627条第1項

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

民法628条第1項

当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。
この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

弁護士法第72条
(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)

弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。

弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介

いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。

この記事の執筆者

弁護士清水 隆久

弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士

埼玉県川越市出身

城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。