弁護士コラム

第65回

『弁護士による退職代行と依頼者、身元保証人、緊急連絡先への電話連絡、自宅訪問』について

公開日:2025年1月8日

退職

弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。

退職代行をはじめて早いもので、数年が経ちました。その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。

コラム第65回は『弁護士による退職代行と依頼者、身元保証人、緊急連絡先への電話連絡、自宅訪問』についてコラムにします。

5分程度で読める内容になっています。このコラムが2025年4回目のコラムになります。

2025年も弁護士法人川越みずほ法律会計をお願いします。

目次

1.電話連絡について

退職代行をした際に、依頼者の方から『退職代行時に会社関係者から、依頼者(自分)や身元保証人、緊急連絡先に電話連絡が来ますか』という趣旨の内容を貰います。まず、退職代行時に弁護士が代理人として、退職手続きを行うため、依頼者が会社と退職手続きについて電話でやりとりする必要はありません。逆に、会社が依頼者や身元保証人、緊急連絡先に対して、電話連絡をしないように規制する法的根拠があるかないかと言われれば、答えとしては『ありません。』

したがって、会社が代理人弁護士を通り越して、直接依頼者に電話連絡することを原則として法的規制をすることはできません。しかしながら、退職代行の手続きの依頼を弁護士に依頼した趣旨からすれば、弁護士としては、最初の受任時の段階から、退職する会社に対して、強く依頼者に連絡しないように通告することができます。そのように強く会社側に通告することで、会社としても依頼者に対して電話連絡を控えます。

しかしながら、それでも、ほとんどないものの、一定の会社は依頼者、身元保証人、緊急連絡先に対して、電話連絡をするケースがありますので、その際には弁護士から会社に対して電話連絡をしないように強く再度、通告することでほとんどの会社は依頼者、身元保証人、緊急連絡先に対して電話連絡をしなくなります。

したがって、退職代行時には依頼者、身元保証人、緊急連絡先に電話連絡しないように強い通告をし、それでもやめない場合には、さらに弁護士から通告をします。再度の通告時にほとんどの会社が依頼者、身元保証人、緊急連絡先に電話連絡しなくなります。

さらに、もう一段階、会社に対する抑止的な心理的効果として、退職代行時に内容証明郵便を使うのも有効です。内容証明郵便について、コラム第64回で詳細に解説していますので、ご参照頂けると幸いでございます。

2.自宅訪問について

次に、退職代行時に会社が依頼者の自宅や身元保証人の自宅、緊急連絡先の自宅に訪問することがありますかという趣旨のご質問(2番目)を貰います。自宅訪問するケースとしては、退職以外で会社からの借入金、車両事故等があるケースが考えられます。退職代行にプラスして、会社からの借入金、車両事故等があるケースでは会社が感情的になっていることも多くあります。

自宅訪問についても、弁護士として、最初の受任時から依頼者、身元保証人、緊急連絡先の自宅に訪問しないように強く通告し、それでも無視をして、自宅に来るようであればトラブルになるので迷わず110番をして警察を呼ぶようにしましょう。その際、退職代行を弁護士に依頼しているにもかかわらず、会社が自宅に訪問してきた旨を電話口で報告するとスムーズに警察が対応してくれます。

自宅訪問が予想されるケースでは、電話連絡と同様に会社に対して抑止的な心理的効果として、退職代行時に内容証明郵便を使うのも有効です。内容証明郵便について、コラム第64回で詳細に解説していますので、ご参照頂けると幸いでございます。

自宅訪問に対する対応策としては、事前に弁護士から会社に対して自宅訪問を控えるように強く通告し、それでも会社が従わない場合には、再度、弁護士から、自宅訪問をしないように強く通告し、同時に、110番をするようにしましょう。

3.会社が不法行為にあたる場合もあります

なお、限定的でありますが、依頼者が弁護士に退職代行を依頼しているにもかかわらず、正当な理由なく、再三に渡って会社が依頼者や身元保証人、緊急連絡先に、電話連絡、自宅訪問を繰り返す場合には、民法709条による不法行為に基づく損害賠償請求が可能になるケースもあります。

・参考条文

民法709条

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

補足としてですが、今回のコラムは会社が依頼者、身元保証人、緊急連絡先に連絡、訪問するケースを解説しましたが、会社にも代理人弁護士が付いた場合には、代理人弁護士から依頼者に対して、直接の連絡、訪問をすることは禁止されています。

・参考規則

弁護士職務基本規程52条

弁護士は、相手方に法令上の資格を有する代理人が選任されたときは、正当な理由なく、その代理人の承諾を得ないで直接相手方と交渉してはならない。

4.まとめ(会社の連絡先をブロック、拒否してください)

今回、会社が依頼者、身元保証人、緊急連絡先に対して、電話連絡、自宅訪問があるか否かについて解説しましたが、よくあるご質問の一つとして、会社のLINE、連絡先、電話番号をブロックしても問題ないでしょうかというご質問を貰いますが、弁護士に退職代行を依頼しているので、会社としては、弁護士を通じて依頼者とコンタクトをとることができるため、結論としては、LINE、連絡先、電話番号等をブロック、拒否しても構いません。極力、精神的な負担をなくすためにも、ブロック、拒否も私はおすすめしています。

弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介

いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。

この記事の執筆者

弁護士清水 隆久

弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士

埼玉県川越市出身

城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。