弁護士コラム

第66回

『弁護士による退職代行と年次有給消化』について

公開日:2025年1月10日

退職

弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。

退職代行をはじめて早いもので、数年が経ちました。その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。

コラム第66回は『弁護士による退職代行と年次有給消化』についてコラムにします。

5分程度で読める内容になっています。このコラムが2025年5回目のコラムになります。

2025年も弁護士法人川越みずほ法律会計をお願いします。

目次

1.有給消化については、弁護士に相談するのが1番です

有給消化と退職は、永遠のテーマと考えています。退職したい側は退職時の有給消化は権利なので、消化するのは当然でありますので、退職代行の依頼時に有給消化についても行使します。最近では、会社側も有給消化させることも渋々ながらも、納得して有給消化することも増えてきました。法律の建前では、有給消化をさせることは当然ですので『渋々』納得するのもおかしい話ですが、今だに退職時の有給消化を嫌がる会社が多いのも現実です。

そこで、ご自身で退職手続きをするのではなく、弁護士に退職代行を依頼した際に、有給消化も合わせて依頼することをおすすめします。

もっとも、法律的には有給消化を拒否することはできないものの、有給時に支払うべき「通常の賃金」を支払いしてこない会社があります。事実上の有給消化の拒否にあたります。その場合に備えて、有給行使をする退職者は、有給の行使をしたという証拠を確保しておく必要があります。その際、1番良い方法は内容証明郵便で、有給の行使をするのが良いと思います。

私の方で退職代行する際には、会社規模、会社での有給消化の実績、退職理由をヒアリングしつつ、内容証明郵便を使って有給消化(有給の行使)をする判断します。

・参考コラム

第64回 『弁護士による退職代行と内容証明郵便について』について

2.時季指定権と時季変更権について

有給消化にあたっては、有給残日数の把握が必要となります。有給付与については、法律上、以下の通りとなります。

勤続年数 年次有給休暇付与日数
6ヶ月 10日
1年6ヶ月 11日
2年6ヶ月 12日
3年6ヶ月 14日
4年6ヶ日 16日
5年6ヶ月 18日
6年6ヶ月 20日

次に、有給行使の際に、会社側が有給の時季変更権を主張する場合があります。

時季指定権は、働く側が行使するもので、いつからいつまで有給消化を行いますというものです。

時季変更権とは、会社側から、その時期は忙しいなどの理由により、有給の変更をお願いするものです。

退職時において、時季指定権に対する時季変更権については、最高裁判所の判断が出ていないものの、退職日までに有給消化する必要があるので、退職時には会社は時季変更権を行使することはできません。したがって、退職代行時には、結果的に依頼者側の有給消化を認める必要性があります。

3.まとめ

有給消化に相当する日に支払うべき給料が未払いになるケースでは、未払い給料に対して、労働基準監督署に「申告」をしても是正指導まで対応して貰えるケースはあまり多くありません。現状、有給消化については、一義的に定まっていない法的解釈もあり、所轄の労働基準監督署の監督官自身も「及腰」になっているように思われます。

したがって、有給消化については、弁護士が担う役割が大きいと考えております。また、有給消化については、事後的な行使ではなく、事前の行使が必要となります。

場合によっては、就業規則上で、30日前に有給消化の行使をする必要があると記載している会社もありますが、その場合には、有給消化の交渉が必要となります。やはり現在でも、有給消化については、交渉が必要であり、行使するのは権利であるものの、100%行使できると約束されているものでもありません。

仮に、過去、裁判になったケースでも、一律に有給消化が認められるとも判断されていません。
したがって、最初に書いたように退職と有給消化は今後もテーマになって行くものと考えています。

・参考条文
(年次有給休暇)

労働基準法第39条

第1項
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

第5項
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介

いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。

この記事の執筆者

弁護士清水 隆久

弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士

埼玉県川越市出身

城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。