弁護士コラム

第74回

『自衛官の懲戒処分待ちと退職代行時の受任通知書の送付先』について

公開日:2025年1月29日

退職

弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。

自衛隊の退職代行を専門的にはじめて早いもので、数年が経ちました。

その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。

コラム第74回は『自衛官の懲戒処分待ちと退職代行時の受任通知書の送付先』についてコラムにします。

10分程度で読める内容になっています。このコラムが2025年13回目のコラムになります。

2025年も弁護士法人川越みずほ法律会計をお願いします。

目次

1.処分待ちを早める交渉の際の受任通知書の送付先について

最近、自衛官の処分待ちのご相談はとても増えています。まず、自衛官の懲戒処分は、懲戒権者が行うことになっています。懲戒処分をするにあたっては、自衛隊施行規則第66条第2項で「適正、且つ、迅速を旨としなければならない」と定めてあるものの、処分が下りるまで、2年から3年かかることもよくあることです。

また、同様に、自衛隊法施行規則第77条1項で「事案の審理を終了したときは、すみやかに、懲戒処分を行うべきであるか、又は懲戒処分を行うべきでないかを決定し、懲戒処分を行うべきであると決定したときは、同時に、その種別及び程度を決定するものとする」とされているものの、事案の審理終了から処分宣告まではかなりの時間がかかっています。

弁護士の方から、所属部隊に処分を早める交渉をするにしても、上にあげているので、どのような見通しになるかも不明である旨の回答が返ってきます。そこで、誰が懲戒権者であるかを調べて、受任通知書を送ろうにも誰が懲戒権者であるかについては自衛隊法、規則、通達からはわかりません。

そこで、私が懲戒処分待ちの自衛官の方の退職代行をする際には、まず、依頼者から、どこまで懲戒処分の話が進んでいるのかをよくヒアリングするところからはじめます。所属部隊なのか、その上の旅団なのか、方面隊なのかなど詳細にヒアリングする必要があります。

一般的に、幹部自衛官の方の懲戒権者は、幕僚長になります。したがって、受任通知書の送付先は、幕僚監部になります。幹部以外の士、曹の方の懲戒権者は、方面隊長になっていますので、受任通知書の送付先は、総監部になります。

その際、幹部自衛官の方であれば、総監部経由の幕僚長の流れになりますので、総監部に受任通知書を送付することも多くあります。また、陸上自衛隊であれば、旅団経由の総監部経由の流れになりますので、旅団に対しても受任通知書を送ることも多くあります。

2.まとめ

懲戒処分待ちの自衛官の方は処分が出るまでは、退職をすることはできません。したがって、懲戒処分待ちの自衛官の方から退職代行を受けた際には、どこに受任通知書を送るかについて重要になってきます。

今、最も退職代行の難易度が高い職業の一つとして、自衛官の退職代行があげられます。自衛官の退職代行では、数多くの経験が必要となりますので、退職ができないなどの悩みがありましたら、遠慮なく私までご相談ください。力になります。

・参考コラム

第20回『自衛官の懲戒処分待ちの退職代行』について

第21回『自衛官の懲戒処分待ちの退職代行』その2について

第73回『自衛官のための懲戒処分待ち→停職処分→退職代行』について

・参考条文

自衛隊法施行規則
第66条第2項

懲戒権者が、懲戒処分を行うにあたつては、適正、且つ、迅速を旨としなければならない。

第77条第1項

懲戒権者は、事案の審理を終了したときは、すみやかに、当該審理に関与した懲戒補佐官の意見及び前条第二項の規定により部下の隊員に供述を聴取させた場合には、その者の意見をきいて、懲戒処分を行うべきであるか、又は懲戒処分を行うべきでないかを決定し、懲戒処分を行うべきであると決定したときは、同時に、その種別及び程度を決定するものとする。

弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介

いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。

この記事の執筆者

弁護士清水 隆久

弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士

埼玉県川越市出身

城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。