弁護士コラム
第75回
『自衛官の退職代行時の受任通知書の送付先』について
公開日:2025年2月3日
退職
弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。
自衛隊の退職代行を専門的にはじめて早いもので、数年が経ちました。
その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。
コラム第75回は『自衛官の退職代行時の受任通知書の送付先』についてコラムにします。
10分程度で読める内容になっています。
目次
1.自衛官の退職代行時の受任通知書の送付先について
まず、自衛官の退職の承認権者については、自衛隊法第31条によれば『幹部自衛官については、防衛大臣が行い、幹部自衛官以外については、防衛大臣又はその委任を受けた者』とされています。
・参考条文
自衛隊法
第31条
隊員の任用、休職、復職、退職、免職、補職及び懲戒処分(次項において「任用等」という。)は、『幹部隊員にあつては防衛大臣』が、『幹部隊員以外の隊員にあつては防衛大臣又はその委任を受けた者』が行うとされています。
実は、退職権者については、防衛大臣から委任を受けた者については、自衛隊法、自衛隊法施行規則、通達を調べてみても明確に定められていません。
また、自衛官幹部についても、承認権者については、防衛大臣であるとされているものの、防衛大臣を宛名として、防衛省に退職に関する受任通知書を送付しても、宛名不明で差し戻されます。
一般的には、実務上、窓口は別に定めれているので、幹部自衛官については幕僚監部になっており、幹部自衛官以外の自衛官は総監部になります。
また、幹部自衛官は総監部を通じて、幕僚監部になりますので、受任通知書は総監部に送付する場合もあります。
まとめますと、受任通知書の送付先は、
幹部自衛官については、部隊→総監部→幕僚監部
幹部自衛官以外の自衛官については、部隊→総監部
になります。
2.労働組合系が行う自衛官の退職代行について
前日、ある労働組合系の退職代行会社が自衛官の退職代行を行いますと宣伝していましたが、そのホームページには、退職の意思は、防衛大臣に伝えれば、3ヶ月に退職になると法律上規定されていると書かれています。
しかしながら、第75回コラムを読んでいただければ、あまりにもざっくりしている書き方で、目についたので、私のコラムで批判的に紹介します。
また、自衛官の方が労働組合に加入すること自体が自衛隊法第64条違反の懲戒事由(服務規律違反)になります。自衛官の方は間違えても労働組合系の退職代行を行わないようにしてください。
私の方では、数件、労働組合系の退職代行会社が自衛官の退職代行をしていますので、依頼者の方と協議しつつ今後、その労働組合系の退職代行会社に対して、訴訟対応を検討しています。
某労働組合系の退職代行会社が行った自衛官の方は、当然のように退職できず、ご自身ではどうすることもできず、私まで再度、退職代行を依頼しています。
労働組合系の退職代行会社が自衛官の退職代行自体が、自衛隊法第64条違反であること知って退職できなくなることを認識しつつ、故意的に行っていると考えております。
もし、労働組合系の退職代行会社がこのコラムを読んだら、ホームページに記載することを差し控えるように検討してください。
3.まとめ
第74回では、懲戒処分待ちの自衛官の退職代行の際の受任通知書の送付先についてコラムにしましたが、今回は、懲戒処分待ちではない通常の自衛官の退職代行の際の受任通知書の送付先についてコラムにしました。
自衛官の退職代行の退職までの難易度は、退職代行の中で1番高いです。退職の希望があっても、ご自身では退職できないケースが多くあります。退職が難しい場合には、遠慮なく私までご相談ください。力になります。
・参考条文
自衛隊法第64条
隊員は、勤務条件等に関し使用者たる国の利益を代表する者と交渉するための組合その他の団体を結成し、又はこれに加入してはならない。
・参考コラム
第74回『自衛官の懲戒処分待ちと退職代行時の受任通知書の送付先』について
弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介
いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。
この記事の執筆者
弁護士清水 隆久
弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士
埼玉県川越市出身
城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。