
弁護士コラム
第78回
『自衛官候補生の退職代行』について
公開日:2025年2月7日
退職
弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。
自衛隊の退職代行を専門的にはじめて早いもので、数年が経ちました。
その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。
コラム第78回は『自衛官候補生の退職代行』についてコラムにします。

目次
1.自衛官候補生とは
自衛官候補生というのは、任期制自衛官を養成するための採用コースです。 自衛官候補生として入隊すると、最初の3ヶ月間は自衛官ではなく「自衛官候補生」という身分になります。自衛官候補生から自衛官に任官しても、まだ教育は続きます。陸上自衛隊の場合、入隊から3ヶ月間は前期教育と呼称され、自衛官になるための基礎教育を受けます。
その後、自衛官に任官し、新しい駐屯地で後期教育を受けます。(人によっては同じ駐屯地の場合もあります。)期間は約3ヶ月間であり、専門職種の教育を受けます。 前期教育と後期教育の合わせて約6ヶ月間が教育期間であり、これを終えると部隊に赴任します。
海上自衛隊も同様に、入隊から3ヶ月間は自衛官候補生課程と呼称され、基本教育を受けます。その後は練習員課程に入ります。期間は約2ヶ月から約3ヶ月です。
陸上自衛隊と違い、自衛官候補生課程から練習員課程へと移る際に、教育隊が変わることはありません。課程の名称が変わるだけで同じ教育隊のままです。合計約5ヶ月から約6ヶ月間が教育期間となります。
航空自衛隊も、3ヶ月間は自衛官候補生教育を受け、その後は術科学校へ入校し約1ヶ月から約10ヶ月間、専門教育を受けたり、部隊赴任したりします。合計約4ヶ月から約13ヶ月間が教育期間となります。
自衛官候補生であっても、営内や基地内での集団生活を行い、プライベートな時間は、週末時の外出許可中であることがほとんどです。また、外出についても二人一組であることもあります。
2.退職代行の方法
退職代行については、自衛官候補生であっても、自衛官の退職代行と違いはありません。
外出許可中に退職代行して、そのまま営内や基地内に戻らないか、または、外出許可中以外のタイミングで、所属先に退職代行して、退職日を決めるかの2パターンしかありません。
外出許可中の退職代行であれば、そのまま外出許可延長を所属から貰い、退職日まで所属に戻らないで退職にもっていきます。外出許可中の退職代行と外出許可中以外の退職代行の依頼の割合としては、50%、50%です。
外出許可中で所属に戻らないケースでも、今までのところ、脱柵等の服務規律違反になっていませんので、私は、外出許可中の退職代行もおすすめしています。退職代行をどのようなタイミングでどのような形で退職代行するかについてお悩みでしたら、遠慮なく私までご相談ください。
自衛官候補生であっても、退職については、たびたび私のコラムでも登場する自衛隊法第40条が適用されますので、「自衛隊の任務を遂行するため最少限度必要とされる期間その退職を承認」されません。しかしながら、通常の退職であれば、最小限度として必要な期間は、14日から21日間程度で退職となっています。
自衛官候補生になったものの精神的な不調を理由として退職を希望される自衛官候補生の方も多くいらっしゃいます。精神的に限界でしたら、遠慮なく私までご相談ください。
3.まとめ
最近では、通常の自衛官候補生の退職代行ではなく、自衛官候補生の期間で、服務規律違反での懲戒処分待ちで、処分を早める交渉を依頼されるケースも増えています。
処分待ちになった場合には、14日から21日で退職になることはなく、少なくとも退職まで数ヶ月はかかります。したがって、退職希望の場合には、時間的余裕をもって依頼されることを強くおすすめします。
自衛官候補生の方で、退職についてお悩みの場合には、遠慮なく私までご相談ください。力になります。
・関連コラム
第26回『自衛官(陸士長、1等陸士、2等陸士)の退職代行【自衛隊編】』について
第33回『自衛官(自衛隊員)の退職代行【階級3曹】』について
第47回『自衛隊員(自衛官)のための親の同意と退職代行』について
第48回『自衛隊員(自衛官)のための外出許可中の退職代行』について
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第54回『弁護士による自衛官(自衛隊員)の病気休暇取得と退職代行』について
・参考条文
自衛隊法第40条
隊員の退職について権限を有する者は、隊員が退職することを申し出た場合において、これを承認することが自衛隊の任務の遂行に著しい支障を及ぼすと認めるときは、その退職について政令で定める特別の事由がある場合を除いては、任用期間を定めて任用されている陸士長等、海士長等又は空士長等にあつてはその任用期間内において必要な期間、その他の隊員にあつては自衛隊の任務を遂行するため最少限度必要とされる期間その退職を承認しないことができる。
弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介
いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。
この記事の執筆者

弁護士清水 隆久
弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士
埼玉県川越市出身
城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。