
弁護士コラム
第77回
『退職代行時のパワハラ、セクハラ対応
と自衛官の処分待ち』について
公開日:2025年2月7日
退職
弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。
自衛隊の退職代行を専門的にはじめて早いもので、数年が経ちました。
その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。
コラム第77回は『退職代行時のパワハラ、セクハラ対応と自衛官の処分待ち』についてコラムにします。

目次
1.パワハラ、セクハラを原因とした処分待ちについて
自衛官の処分待ちのご相談が増えています。処分待ちでは、懲戒原因が発生してから処分宣告→実際の処分(訓戒、減給、停職、免職)までの期間が長期に渡ります。また、処分待ちの場合には、自衛隊法第40条の「自衛隊の任務の遂行に 著しい支障を及ぼすと認めるとき」にあたり、退職手続きがストップします。そのため、依願退職であっても、一切、退職手続きが進まなくなります。
懲戒原因の調査や調べ→調書サインから処分宣告までは、通常、1箇所で行っていますので、かなりの時間がかかります。一度、懲戒の調査が始まった場合には、仮に、嫌疑なしとなった場合でも、その嫌疑がないとされるまでの間もかなりの時間がかかります。
弁護士が交渉しないで、ご自身で、懲戒処分について部隊に話をした場合には、2年から3年かかるケースもあり、例えば、パワハラやセクハラの対応申告の場合には、関係者の聞き取りもあるので、さらに時間がかかることがあります。
実は、懲戒処分については、自衛隊施行規則第66条第2項で「適正、且つ、迅速を旨としなければならない」と定めてありますが、迅速に行われることは、重大な服務規律違反などで、免職に該当する以外にないのが実情です。
そこで、私としては、処分待ちを早める交渉をして、ご自身で退職手続きを行うより早く処分を早める依頼を受けています。その際、数多くの処分待ちの交渉をしていますので、どのように、受任通知書を送るなどのノウハウもあります。中には、パワハラ、セクハラのケースで、交渉の受任時から数ヶ月で処分宣告までもって行っています。
処分待ちの交渉は、陸上、空自、海自のどの階級の自衛官の方からも依頼を受けることができます。幹部自衛官の方は特に、指導の一環であるにもかかわらず、パワハラやセクハラの申告を受けて、処分待ちになるケースや、幹部自衛官以外の自衛官の方は、同僚がパワハラやセクハラを受けている際に、報告義務違反を原因として、処分待ちになるケースも散見されます。
2.まとめ
今回は、パワハラ、セクハラを原因として、処分待ちになるケースについて、コラムにしました。一度、処分待ちになると自暴自棄となり、処分原因が重なるケースも散見され、また、昇進にも影響してくるため、最近では、退職手続きと一緒ではなく、処分待ちから処分宣告までの期間を短くさせる依頼だけを受けるケースも増えています。
退職ではなく、処分期間を短くするための交渉のみでも委任を受けていますので、悩む前に遠慮なく私までご相談ください。
力になります。
・参考コラム
第20回『自衛官の懲戒処分待ちの退職代行』について
第21回『自衛官の懲戒処分待ちの退職代行』その2について
第73回『自衛官のための懲戒処分待ち→停職処分→退職代行』について
第74回『自衛官の懲戒処分待ちと退職代行時の受任通知書の送付先』について
・参考条文
自衛隊法第40条
(退職の承認)
隊員の退職について権限を有する者は、隊員が退職することを申し出た場合において、これを承認することが自衛隊の任務の遂行に著しい支障を及ぼすと認めるときは、その退職について政令で定める特別の事由がある場合を除いては、任用期間を定めて任用されている陸士長等、海士長等又は空士長等にあつてはその任用期間内において必要な期間、その他の隊員にあつては自衛隊の任務を遂行するため最少限度必要とされる期間その退職を承認しないことができる。
自衛隊法施行規則
第66条第2項
懲戒権者が、懲戒処分を行うにあたつては、適正、且つ、迅速を旨としなければならない。
第77条第1項
懲戒権者は、事案の審理を終了したときは、すみやかに、当該審理に関与した懲戒補佐官の意見及び前条第二項の規定により部下の隊員に供述を聴取させた場合には、その者の意見をきいて、懲戒処分を行うべきであるか、又は懲戒処分を行うべきでないかを決定し、懲戒処分を行うべきであると決定したときは、同時に、その種別及び程度を決定するものとする。
弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介
いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。
この記事の執筆者

弁護士清水 隆久
弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士
埼玉県川越市出身
城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。