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弁護士コラム
第76回
『パワハラ、セクハラ対応
と会社都合退職』について
公開日:2025年2月5日
退職
弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。
私が退職代行を専門的にはじめて早いもので、数年が経ちました。
その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。
コラム第76回は『パワハラ、セクハラ対応と会社都合退職』についてコラムにします。
10分程度で読める内容になっています。
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目次
1.会社都合退職のメリット
悩ましい相談の一つとして、パワハラ、セクハラによる会社都合退職のご相談があります。
パワハラ、セクハラによる会社都合退職をすることで、6ヶ月以上の雇用保険加入期間があれば、失業保険が給付されることや、特定受給資格者にあたり、待機期間が7日となり、給付制限の2ヶ月がなくなりますので迅速な失業保給付に資することにあります。
退職者にとっては、メリットがあります。
その一方で、会社にとっては、一定期間、助成金の支給を受けることができなくなることや、裁判上、パワハラによる慰謝料請求を受ける際に、証拠となってしまうというデメリットがあります。会社としては、デメリットが大きいため、会社でパワハラがあったとは、現実として、認めることはほとんどありません。
他のコラムやyoutubeで良く紹介されているのが、ハローワークでの異議申し立てによる退職区分の変更です。離職票を受け取った際に、ハローワークの窓口で、退職区分を自己都合退職から会社都合退職に変更するように申し立てをする方法です。
その際、2人から3人以上のパワハラ、セクハラを退職者が受けいたとする証言を集めて、ハローワークに申し立てすれば、会社都合退職に変更することができると紹介していますが、この方法では残念ながら、退職区分を変更することはできません。
ハローワークに対して退職区分の変更を申し立てした際には、ハローワークは、会社に対して、パワハラ、セクハラがあったのか否かについて聞き取りします。ハローワークは裁判所ではないため、あくまでも形式的な審査しかできません。形式的な審査では、退職者と会社のどちらの言い分のどちらが正しいかの実質的な審査をすることはできません。
したがって、退職者がハローワークに異議申し立てをしたとしても、退職区分は変更されず、会社の発行した理由である自己都合退職のままにしかなりません。仮に、証言者を何人も集めて、ハローワークに異議申し立てしても、ハローワークには、退職者、または、会社のどちらの言い分が正しいかを審査する能力はありません。
では、どのように退職区分を変更させるかは、現在のところ、①裁判所にパワハラ、セクハラの慰謝料等請求を提起する必要があります。②判決、または、和解調書に、パワハラ、セクハラの事実を記載してもらう、または、会社都合退職の記載を入れてもらい、③その判決、または、和解調書を離職票と一緒に、ハローワークに提出する、しかありません。
とても面倒で手間がかかります。
2.おすすめの方法
そこで、私がおすすめする方法は、パワハラ、セクハラに対して、心療内科で、適応障害、うつ病、抑うつ状態の診断を退職前までに診断されておく方法です。簡単に言えば、特定理由離職者に該当させることで、6ヶ月での退職でも失業保険の支給要件を満たし、2ヶ月の支給制限を無くす方法です。
詳しくは、コラム第63回 『弁護士による退職代行と失業保険給付金サポートが最大100万円が受け取れるは本当か!?』について、を読んでください。詳しく解説しています。特定理由離職者については、診断書があれば該当しますので、ハローワークの形式審査によく合致しています。改めて第76回のコラムでおすすめします。
3.まとめ
繰り返しになりますが、あるコラムやyoutubeでは、数人の証言を集めてハローワークに異議申し立てをすれば、退職区分を自己都合退職→会社都合退職に変更できると解説していますが、ハローワークに対する知識があれば過大に言い過ぎているのがわかります。私は、正しい情報を発信して適正に運営した方が良いと考えます。
今回は、パワハラ、セクハラに対して、会社都合退職にできるか、できない場合には、異議申し立てをして、退職区分を自己都合退職から会社都合退職に変更できるか、について重点的に解説しました。私の方には、異議申し立てが失敗して、失業保険が支給されなくて、助けてほしいという相談がたくさん来ます。
私は、今回のコラムで異議申し立てが失敗しても、事前に保険を掛けておく方法を解説しました。会社都合退職については、誤解がとても多く、適当に解説している情報が多いです。困ったら、退職代行の前に私までご相談ください。力になります。退職代行後では、救済のアドバイスができなくなる可能性があります。ご注意ください。
・関連コラム
第60回『弁護士の退職代行と退職時の給付金が最大200万円?』について
第62回『弁護士による退職代行と社会保険給付金サポートが最大500万円が受け取れるは本当か!?』について
第63回『弁護士による退職代行と失業保険給付金サポートが最大100万円が受け取れるは本当か!?』について
上記の3コラムを読めば他社の高額な給付金プランに加入する必要はなくなります。私は有益な情報だと考えています。
・関連ホームページ
弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介
いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。
この記事の執筆者
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弁護士清水 隆久
弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士
埼玉県川越市出身
城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。