弁護士コラム

第90回

『賞与返還と退職代行』について

公開日:2025年3月25日

退職

弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。

退職代行を専門的にはじめて早いもので、数年が経ちました。

その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。

コラム第90回は『賞与返還と退職代行』についてコラムにします。

この時期から賞与時期のタイミングと退職代行の依頼時期についてご相談が増えます。

目次

1.賞与支給について

賞与支給の場合には、本来であれば退職日までに支給日が到来すれば法的には支給すべきとなります。

例えば、退職日が6月30日で、賞与時期日が6月15日の場合が考えられます。この場合には、賞与は支給されるのが原則ですが、場合によっては、会社の業績や本人の貢献度を勘案して、減額することは法的に許容されます。

では、不支給とするのは、どのように考えれば良いでしょうか?

賞与とは、賞与支給算定期間の過去に対する貢献度と将来に対して期待される貢献度から成り立っていますので、退職される方は、将来に対する貢献度がないこととなります。

したがって、退職する方については、将来に対する貢献度部分を減額するのは許されますが、仮に、会社の業績の悪化などの特別な事情のない限り、支給額を「ゼロ」にすることは許されません。

しかしながら、賞与が不支給となった場合には、裁判などをする手間を考えれば、賞与をもらった後のタイミングで退職の意思を伝えて退職するのがスムーズだと私は考えます。

2.退職予定者について

次に退職予定者に対して賞与の減額または支給ゼロにするなどは、どのように考えればよいでしょうか?

賞与の法的性質は、過去に対する貢献度と将来に対する貢献度に対して支給するものであるので、将来に対する貢献度の部分については減額すること自体は許されます。

しかしながら、過去に対する貢献度も全て否定して、支給をゼロとするのは、法的に無効になる可能性もあり、そのように定めている就業規則などは無効になる可能性があります。

3.退職者に賞与返還請求する事案について

では、一番、最近でよくある質問で、支給した賞与を1ヶ月以内に退職した者は返還しなければならないとする就業規則などにより、返還させる効力は有効となりますか?というご質問にご回答します。

この事案については、賞与の法的性質が過去に対する貢献度と将来に対して期待される貢献度部分については、返還する余地があります。

しかしながら、就業規則などで、過去に対する部分と将来に対する部分が明確に区分がされ、計算方法がしっかりしている必要があります。同様な趣旨は、平成8年6月28日、東京地裁で判断されています。

4.まとめ

最近では、賞与支給から1ヶ月以内の退職者に対して賞与返還をする会社が増えています。返還時には、最終給与と相殺する形もありますが、例外的な処理として、賞与と給与を相殺することは労基法第24条の賃金全額払いの原則に抵触しません。退職代行にするにあっては注意が必要です。

なお、支給日に在籍していない退職者に賞与を不支給としても、法的には問題なく、判例で認められています。一部、公務員等では例外規定がありますので、注意が必要です。

弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介

いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。

この記事の執筆者

弁護士清水 隆久

弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士

埼玉県川越市出身

城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。