
弁護士コラム
第102回
『退職証明書、実務証明書をもらえないときは?対処方法は?』について
公開日:2025年4月7日
退職
弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。
退職代行を専門的にはじめて早いもので、数年が経ちました。
その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。
コラム第102回は『退職証明書、実務証明書をもらえないときは?対処方法は?』についてコラムにします。

目次
1.最近、相談が増えています。
退職証明書(実務証明書)の発行を退職した会社がしてくれないという相談は多くあります。
例えば、最近では、放課後等デイサービスの管理者になる場合や、放課後デイサービスでの加算をとる場合などに、前職の退職証明書や実務証明書が必要になるケースがあるにもかかわらず、退職した会社が発行してくれないケースが多くあります。
また、退職した会社が退職証明書や実務証明書を発行してくれないケースの解決方法については、具体的に書いていない情報も多いため、私の弁護士コラムで書くことにしました。退職証明書や実務証明書についてお悩みの方には、有益な情報になるようにしたいと思います。
まずは、退職証明書の請求について解説し、その後に、実務証明書の請求について解説します。
2.退職証明書の交付について
退職証明書については、労基法第22条第1項に根拠があります。
労働者が、退職の場合において、①使用期間、②業務の種類、③その事業における地位、④賃金又は⑤退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を『請求』した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを『交付』しなければならない。
退職証明書を発行してくれない場合には、まずは、所轄の労働基準監督署に退職証明書の不発行について申告した上で、監督署から退職した会社に対して、退職証明書の交付をするように指導してもらいます。
しかしながら、あくまでも、申告→指導は、退職した会社の任意の形をとりますので、退職証明書の交付を拒否された場合には、労働基準監督署は何もできません。
労働基準監督署へ労基法第22条第1項違反で告訴する方法も考えられますが、労基法第22条第1項の規定の仕方が何日以内と規定されている訳ではなく、『遅滞なく』と規定されているので、明確な時期の違反が観念できず、告訴の受理は難しいと考えます。
退職証明書の交付の申告、告訴が上手く行かない場合には、裁判所への訴訟提起が一番効果的です。
過去にも、私の方では、退職証明書の交付について裁判提起する依頼を受けたこともあり、今後、その依頼が増えてくると考えています。退職証明書の発行、交付がされない場合には、遠慮なく私までご相談ください。
3.実務証明書の交付について
次に、実務証明書の交付(発行)について解説します。
実務証明書の発行は、労基法第22条第1項の『証明書』にあたるかについて法的な問題があります。しかしながら、仮に、実務証明書が労基法第22条第1項の『証明書』にあたらなくとも①使用期間、②業務の種類、③その事業における地位、④賃金又は⑤退職の事由については、請求できる事項であるため、①②③④⑤の範囲であれば実務証明書の交付の請求は可能だと考えます。
その上で、退職証明書と同様に、所轄の労働基準監督署への申告などで、催促する方法もあるもののやはり、退職した会社から拒否された場合には、監督署を通じての催促が難しいと考えます。
とすれば、実務証明書の証明事項については、①②③④⑤を満たす範囲であれば、裁判所を通じて催促する方法をおすすめします。
4.まとめ
退職代行を使って退職した場合には、会社が退職証明書や実務証明書の発行をしてくれないことも多くあります。また、ご自身で退職した場合でも会社と円満に退職できない場合にも、退職証明書や実務証明書の発行をしてくれないケースが多くあります。
発行や交付してくれない場合には、退職者の不利益が大きい場合もありますので、お困りでしたら、私までご相談ください。力になります。
弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介
いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。
この記事の執筆者

弁護士清水 隆久
弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士
埼玉県川越市出身
城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。