弁護士コラム

第39回

『幹部自衛官の退職代行』について

公開日:2024年11月8日

退職

弁護士法人川越みずほ法律会計の弁護士の清水隆久と申します。
退職代行をはじめて早いもので、数年が経ちました。その間、数多くの退職代行をした経験から「これは」と思うことをコラムにします。

コラム第39回は『幹部自衛官の退職代行』についてコラムにします。毎年9月、10月、11月は、各部隊とも演習が多くなりますので、退職承認まで時間がかかったり、他の時期より退職の相談も少なくなります。5分程度で読めますので、お付き合いください。

目次

1.幹部自衛官の退職代行について

自衛隊には階級があり、全部で16階級定められています。「幹部」は3尉以上の自衛官のことで、部隊の骨幹として強い責任感と実行力で部隊を指揮する立場にあり、卓越したリーダーシップが必要とされます。「曹」は専門分野における技能を有するほか、士を直接指導し、幹部を補佐する立場にある者。「士」は曹などの指揮下で各種の任務を直接遂行する立場にある者のこと。曹と士の人数を合計すると、自衛官の定員の約8割に及ぶ。「准尉」とは3尉以上の幹部自衛官と曹の間の階級で、曹士隊員をまとめて指導し、幹部の補佐を行います。約23万人の自衛官は、階級順に「幹部」(19%)、「曹」(60%)、「士」(19%)などで構成されています。

幹部の方は、営外にお住まいがある点で「曹」「士」とは異なります。最近では「曹」「士」の退職代行は、外出許可中に行うのが一般的でありますが「幹部自衛官」の方については、代休及び年次休暇消化の交渉及び退職日を早める交渉が「退職代行」の中心業務となります。幹部自衛官の退職代行については、一度も出勤しないで「退職」するため「指定した日」以降、代休、年次休暇があれば、代休、年次休暇を消化しつつ、代休及び年次休暇消化日の翌日を「退職日」とします。

2.退職までの期間について

また、幹部自衛官の退職期間は、退職の申し出から退職まで75日程度かかりますが、交渉することで、75日以内に「退職日」にもっていくことができます。 今までの事案では、退職通知した日から退職日まで、45日程度に短縮したケースも多くあります。幹部自衛官の方は、規則第28条によって、退職希望日の 「30日前」までに、 順序を経て陸上幕僚長に1部「上申」するものとなっておりますので、準備期間も合わせると最低でも45日程度は退職までに必要となります。

参考規則

陸上自衛官人事業務規則第28条(退職)
第28条

退職(定年及び任期満了による退職を除き、応募認定退職を含む。) を希望する者は、退職願(別紙第 20)を作成し、幹部並びに陸上幕僚長を任免権者とする准陸尉、陸曹及び陸士については、退職希望日の30日前までに、 順序を経て「陸上幕僚長」に1部上申するものとする。

ここまでをまとめますと、幹部自衛官の方の退職は、退職代行を行った日から45日から75日程度で退職にもって行くことができます。しかしながら、弁護士の交渉次第で、もっと早く退職にもっていくこともあります。幹部自衛官の方でお悩みの方は、遠慮なく私までご相談ください。

3.年次休暇消化のみの依頼について

次に、幹部自衛官の方で退職代行するケースは、すでに「退職日」は決まっているけど、退職日まで、年次休暇がとられないため「年次休暇の消化について交渉をして欲しい」という依頼が多くあります。今までのところ、希望した分の年次休暇消化日数については、全て希望通りに消化できています。年次休暇消化のみでも私の方で積極的に依頼を受けておりますので、お困りの際には、遠慮なく私までご相談ください。

4.処分待ちについて

懲戒処分待ちの退職代行について、最後に解説します。幹部自衛官の方で、懲戒処分待ちで長期間、退職ができないケースがあります。懲戒処分待ちの場合には、自衛隊法第40条「任務の遂行に著しい支障を及ぼすと認めるとき」にあたり、退職することはできません。しかしながら、幹部自衛官の方であっても、私の方で処分を早める交渉をします。今までの懲戒処分待ちの事案は「文書破棄」したケースや「パワハラ」を行ったケースで、いずれも数ヶ月で処分宣告になるケースもあります。

また、処分待ちに近いケースとしては、部隊内の隊員が文書破棄をしたケース、調査が終わるまで退職が進めないケースで、交渉して通常の退職期間と同じように、45日程度で退職にもっていっています。数多くの幹部自衛官の退職代行を行なっていますので、なかなか退職ができない場合には、遠慮なく私までご相談ください。

参考コラム
退職に関して処分待ちのケースについては、第20回第21回を参照ください。より理解が進むと思います。

参考条文

自衛隊法
(退職の承認)
第40条

第31条第1項の規定により隊員の退職について権限を有する者は、隊員が退職することを申し出た場合において、これを承認することが自衛隊の「任務の遂行に著しい支障を及ぼすと認めるとき」は、その退職について政令で定める特別の事由がある場合を除いては、任用期間を定めて任用されている陸士長等、海士長等又は空士長等にあつてはその任用期間内において必要な期間、その他の隊員にあつては自衛隊の任務を遂行するため最少限度必要とされる期間その退職を承認しないことができる。

なお、幹部自衛官の退職に関する承認権者は、防衛大臣になっていますが、陸上幕僚長になります。

参考条文

自衛隊法
(任命権者等)
第31条

隊員の任用、休職、復職、退職、免職、補職及び懲戒処分(次項において「任用等」という。)は、幹部隊員にあっては防衛大臣が、幹部隊員以外の隊員にあっては防衛大臣又はその委任を受けた者(防衛装備庁の職員である隊員(自衛官を除く。)にあっては、防衛装備庁長官又はその委任を受けた者)が行う。

弁護士法人川越みずほ法律会計の紹介

いち早く退職代行を手掛け、今までも多数の相談及び解決事例があります。
今回、その中でもご質問が多いご相談事項をコラム形式でまとめました。

この記事の執筆者

弁護士清水 隆久

弁護士法人川越みずほ法律会計 代表弁護士

埼玉県川越市出身

城西大学付属川越高校卒業、中央大学法学部法律学科卒業、ベンチャー企業経営、労働保険事務組合の理事、社会保険労務士事務所の代表を経て、予備試験合格、司法試験合格、司法修習終了後、弁護士法人川越みずほ法律会計を設立、同弁護士法人代表に就任。労務・税務・法律・経営の観点から、企業法務に関わる傍ら、東から西へと全国を飛び回る。社会保険労務士時代に得た労働社会保険諸法令の細かな知識を活かし、かゆい所に手が届く退職代行サービスを目指して日々奮闘中。2019年に携わった労働事件(労働者側・使用者側の両方。労働審判を含む)は、60件以上となる。